日本人から人気のフランスでのインターンシップは、本場でフランスの文化的な仕事を現場で学ぶ「手に職」系です。
しかし、フランスでは、大学でも、在学中に皆、インターンシップを行います。
今回は、必須科目でもあるフランスの大学のインターンシップについて、日本との違いなど、様々な角度からお話ししたいと思います。
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フランスの大学でインターンシップは必須
手に職をつける職業訓練的なインターンシップを含め、フランスでは、キャリア形成のためにインターンシップは、必ず必要なものとなっています。
フランスの大学は、学士を得るためには3年間、修士は5年間の教育課程、博士は8年間の研究過程となっています。
そして、インターンシップは、大学のカリキュラムに導入されていて、卒業や学位を取得するためには、必須科目です。
こうしたインターンシップは、大学で学んだ専門課程と同じ分野、例えば、法学部なら法律事務所、金融や経済論を専攻している学生なら銀行などで実地研修をすることを言います。
学業教程の必修科目になるわけですから、自分の専門分野以外の職場の場合は、アルバイトとなってしまい、インターンシップとは異なります。。
また、インターンシップの期間は、1年に2ヶ月〜6ヶ月以内とされていて、学位取得によって、その数や期間も変わってきます。
就活のないフランスの大学
フランスの大学のシステムでは、日本の大学生が行う就活はありません。新卒一括採用再度もありません。
未経験の新卒者を一斉に雇用し、育成していく日本の社会と異なり、採用にあたって、即戦力を重視するフランスは、ディプロム社会とも言われるように、個人の取得した学位や資格と職務経験が重要視されます。
日本のように大学を卒業する前に、就活を行い、卒業前に内定をもらうことは、フランスでは、稀です。
フランスは、新卒一括採用ではないので、企業の募集、採用の方法や時期は、バラバラですから、大学を卒業した後に、自主的にそれそれ各自、就職先を探すスタイルが多いのが現状です。
では、どうやって、フランスの若者は、大学卒業後に、就活するのでしょうか?
それは、在学中に行うインターンシップが重要なポイントを占めているのです。自分が学んできた専門分野の企業でインターンッシップを行うことが学位取得だけでなく、卒業後の就職先を見つける手段となるということです。
新卒一括採用制度がないフランスでは、こうした大学の学業の必修科目のインターンシップを行うことにより、コネクションも広がります。
インターンシップ期間を試用期間として考えてくれるような企業もありますから、大学を卒業と同時に、インターンシップ先の企業に採用されるということも少なくありません。
だた、フランスの雇用情勢は、大変厳しい状況で、中でも、若者の失業は、深刻な問題です。
たとえ、大学在学中にインターンシップを経験した企業に卒業後に就職できたとしても、すぐに、フランス語でCDIと言われる正規雇用社員で雇われることはありません。
まずは、採用してから半年、もしくは、1年間は、CDEと言われる非正規社員として働くのが一般的です。これは、フランスらしい典型的なキャリアパスです。
卒業前のフランスのインターンシップは、単なる学位取得のためでなく、個人で就職先を見つけなくてはならないフランスの大学生にとって、大事なキャリア形成への最初の第一歩となるわけです。
フランスの大学生のインターンシップの探し方
日本の大学のキャリアセンターでも、最近は、インターンシップできる企業などの相談を多く受けつけています。
日本の外資系に就職を希望する大学生は、夏休みなどを利用して、そうした企業でインターンシップをすることが採用に有利とも言われています。又、こうしたインターンシップを積極的に勧めている大学もあります。
日本には、就職に強いブランド大学がありますから、そうした大学には、卒業生によるコネクションで作られている組織があり、インターンシップのなどの募集も太いパイプがあります。
また、グローバル化が進む多くの日本の大学は、全必修科目のカリキュラムを英語で行う国際教養学部(リベラル・アーツ学部)を設けているので、海外からの留学生の増加、および、外資系の就職先などを考えると、こうした学部では、日本らしいきめ細かい学校側からのサポートを得ることができます。
フランスの高等教育機関は、主に、大学とグランゼコール(エリート養成機関)と二つにわかれています。
後者のエリート養成機関と言われるグランゼコールは、大学とは異なり、高校卒業後、選ばれたものが、2年間、準備クラスで勉強し、さらにテストを受け合格者のみが進めるという狭き門となっています。
こうしたグランゼコールは、国を引率するための管理職、幹部職を確保するため、フランス革命以降に設立されました。世界の大学ランキングでは、評価されにくいフランス独自のエリートを作り出す機関で、フランス国外では、あまり知られていません。
商業や経済系のグランゼコール以外、例えば、エコール・ポリテクニークや高等師範学校だと在学中にすでに、準国家公務員としての手当がもらえ、インターンシップを行う先も、就職先も、エリート官僚としてのルートが用意されているわけです。
商業系などのグランゼコールの多くの卒業生が仏国を代表とする大企業のトップで働いています。ですからもこうした学校のインターンシップ受け入れ先も、そのような大手企業名がズラリと並んでいます。
グランゼコール以外のフランスの大学で在学中に行わなければならないインターンシップには、こうした特別なルートは存在しません。
また、大学内でも特別なツールがあるわけではなく、インターネットを活用し、直接自分から、企業にコンタクトを取ったりしながらインターンシップの受け入れ先を見つけることになります。
これは、フランス人の学生も、日本から正規でフランスの大学、または、大学院に留学している者でも同じで、インターンシップ先を探すのも一苦労といったところです。
フランスのインターンシップには縁故も多い
フランスのインターンシップの受け入れ先の見つけ方で、以外にも多いのが、縁故によるものです。フランス社会は、階級社会が根強く残っているのです。
専門的な知識のある学士、修士、博士を取得を目指しているの多くの学生は、生粋のフランス家庭、ブルジョワ家庭で育った人たちが多く、弁護士などの資格を有する職業であっても、インターンシップ先は、そうした家族の紹介があれば、断然に有利で、逆にこうした階級社会によるコネがないと大変、不利とも言えます。
フランスで、こうした親や家族のコネがない場合、例えば、両親が外国人であるとか、留学生の場合は、いくら学力が優秀であっても、定員数に限りもある良いインターンシップ先を決めることは、難しいのが現実です。
フランスは、EU圏をはじめとする外国人や移民の2世、3世の多くが大学やマスターで学んでいます。ただ、フランスにある外資系企業は日本ほど多くありませんので、そうした企業でインターンシップを行うことも簡単ではありません。
大学などで専攻している学問によっては、フランス以外にある企業や、EUの首都、ベルギーのブリュッセルの国際機関などでインターンシップを行う学生もいます。
フランスは、シェンゲン協定に加盟しているので、EU圏内のシェンゲン協定加盟国内であれば、面倒なビザ等がの手続きもなく、簡単に移動と滞在ができます。
フランス人は仏語しか話さないというのは、昔の話であって、高等教育を受けたフランス人は、日本人以上に英語が堪能です。(もともと、アルファベットの語源ですから)
英語ができるのであれば、何もフランス国内だけでなく、他国で自分の専門分野のを生かしたインターンシップを行うケースも増えています。
そして、そのまま、その国で就職してしまうフランス人も増えています。フランスに帰国しても、仕事があるかわからないので、こうした人生を選ぶのも一つの選択ですね。
日本人のフランスの大学正規留学生のインターンシップ
日本人がフランスの大学に正規留学している場合に、フランス人と同様に卒業単位のためにインターンシップを行わなければなりません。
先ほど、述べたように、フランスに何か強いコネがあるなら別ですが、そうでなければ、インターンシップ先を見つけるのは、日本人の正規留学生にとっては、大きな問題です。
フランス人ですら、インターンシップ先を見つけるのに苦労するわけですから、日本人であれば、なおさらです。だから、フランス現地にある日系企業でインターンシップをする日本人の正規留学生が多く見受けられるのです。
こうした日系企業のインターンシップ受け入れ先は、すでに過去にそうした日本人正規留学生を受け入れているので、ルートが出来上がっている場合も多いようです。
また、こうした日系企業もフランスの労働法にしたがって、フランスのインターンシップ制度を取り入れることによって税金面などのメリットもあるのです。
又、日本語が通じるので、大学、企業、本人からなるインターンシップ三者協定書の作成までの段取りも簡単なわけです。
ただ、この場合、フランス人と違って、インターンシップを終了し学位を取得した後に、受け入れ先企業が、日本人正規留学生を正規採用するというケースは、ほぼありません。あくまで、インターンシップの期間のみ研修生として受け入れるということです。
フランス人は、インターンシップを行った後、大学卒業後にそのまま受け入れ先に就職できることまで考慮してインターンシップ先を決めたりしますが、日本人の正規大学留学生の場合、保有している滞在資格ビザは正規学生ビザですので、それを就労ビザに変更してくれるインターンシップの受け入れ企業は極めて少ないので、それを望んでいる場合、学位取得に必須なインターンシップができなくなってしまうことがあります。
中には、フランスの大学に正規留学していて、そのままフランスで就職したいという気持ちに変わってしまう日本人もいますが、大方の人は、留学前に決めた目的が明確なので、フランスでインターシップを経験し、学位を取得し、ビザ期限内に日本に帰国し、日本で就職先を見つけるというパターンです。
日本の大学生がフランスでインターンシップ
日本の大学でも、国際化が進んでいます。そして、また、フランス政府と日本政府の間で、イノベーション・インターシップ100がスタートしました。
これは、フレンチ文化をを仕事にする「手に職」系のインターンシップとは違い、フランスが誇る革新的な大企業でのインターンシップに参加できる制度です。
大学によっては、このインターンシップについての募集について相談できるようなので、自分の大学のキャリアセンターに聞いてみるのもいいでしょう。
英語のレベルが高く、フランス語にもある程度自信がある大学生が挑戦してみるには良いインターンシップ制度ではないかと思います。
日本の大学に籍をおきながら、こうしたフランスでのインターンシップ参加の経歴は、日本での就活にも役にたつものだと思います。特に、卒業後に、外資系や在日フランス企業に就職を希望している人は、マストなインターンシップではないでしょうか。
日本にある在日フランス企業や外資系企業のインターンシップもありますが、日本で参加するより、また、大学在学中にフランスに留学するより、このイノベーション・インターシップ100は、憧れのフランスで働く経験と文化や語学などを同時に学ぶことができるという大きなメリットがあります。
それぞれの受け入れ先企業によって、選考基準も異なるので、是非、詳しく調べてみてください。
まとめ
さて、今回は、フランスでは、日本と違い、大学を卒業する前に、必ず皆が経験するインターンシップについて、お話しさせていただきました。
就活もないフランスの大学では、インターンシップがある意味、フランスの大学生の就活の一つなのです。
エリート養成機関に合格し、そのままインターンシップ先から就職先まで保障されている道に進めれば、苦労することはないですが、そうした人たちはほんの一握りで、フランスの学歴社会は日本比ではありません。
法学部、医学部などの難関学部は、グランゼコールではなく、大学の学部になりますから、インターンシップ先も、先輩のインターンシップ先などを紹介してもらったりしますが、基本は、自主的に見つけることにになるので、親や家族のコネも大きく関わってきます。
フランスの大学生の就職難は、深刻です。エリート養成機関のグランゼコール出身でも、インターンシップを終えて、そのままそこに就職しないと、ペナルティー(準国家公務員として手当てをもらっていた場合)を払わなければなりません。
また、仏国を代表とする民間企業でインターンシップを行って、そのまま就職が可能でも、選り好みをしていると、いくら、エリート養成学校卒業生であっても、また、フランスに新卒で一斉に就職するシステムがないからと言っても、機を逃してしまうと、最終的な目標である自分の就職先が見つからない事態に陥ってしまいます。
そして、就職せず、他の大学に編入したりと、学業を続けて、30歳を過ぎても、学生である高学歴の優秀なフランスの若者が多いのが最近の傾向です。
フランスにおけるインターンシップは、大学をはじめとした高等機関で勉強してきた専門知識を使い研修する必須科目であるだけでなく、就職先を見つけるための最初の試練でもあるわけです。
これからもっと、日本の大学でも、就活の一環として、学生のインターンシップに力を入れていくことになると思います。
特に、外資系就職希望者は、在学中に語学留学だけを視野に入れるのではなく、今回、ご紹介したフランスのイノベーション・インターンシップ100などを利用することによって、将来のキャリアプランへの近道を見つけてほしいものです。