フランスといえば、「あら!素敵!」なイメージ。日本の皆さんは、本当のところのフランス経済の特徴や問題には無関心なもの。
エコノミストが語るフランス経済の特徴や問題では到底わからない、フランス人の家庭が抱える経済の問題とその特徴などを素敵なフランスだけが好きな読者にとってはとてもつまらないブログを書いてみたいと思います。
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経済の柱であるフランスの家計の特徴
経済というとまず、一番最小単位で考えるなら、家庭の経済になると思います。家庭は、社会を構造する一番小さい生活団体で、私たちは、家族があって生まれ、生きている、生きていけるわけです。
それはフランスも同じ。家族単位でのそれぞれ家計という経済があり、企業があり、政府がありフランス経済が成り立っているわけですが、フランスの家庭の経済には、日本とは少し異なる特徴があると現地に住んでいて感じます。
フランスにはもちろん単身者もいますが、ひとり者も世帯主ということになり、家族としての一つのカタチとして一つの経済の単位です。
さて、ここでは、フランスの家族の経済を夫と妻がいて子供がいるという典型的なファミリースタイルで見ていきましょう。
事実婚制度が進んだフランス。まだ、今では、私が結婚した頃にはなかったPACS法が成立したために、婚姻せずに夫婦と同じ権利を持ち、子供を出産し養育しているカップルがフランスに多くいます。
家庭は、家計が一体となるので、離婚によって発生する慰謝料や養育費は、家族の経済の大きな問題になるわけです。フランスの離婚の特徴として、日本のように協議離婚がなく、離婚には裁判が必然で、離婚手続きから離婚成立までに弁護士などに費用がかかりすぎてしまうという問題があります。離婚をしたくてもお金がなくて経済的に無理な夫婦もたくさんいます。
誰が離婚をするためだけに多額の出費を払うような経済負担を好みますでしょうか?だから離別による経済的なダメージをも少なくするPACS法という法律によって、カップルは行政的に婚姻と同様の夫婦としての権利が与えられ、家庭という共に生活する一つの単体としての経済の仕組みを容認されているのです。
PACS法の下でパートナーと暮らして子供を授かっても、カップルの別れがくるのも多いのがフランス。破局を迎えても正式な夫婦の離婚よりも財産の問題なども少なくシンプルにパートナーの解消ができる特徴があるのがPACS法なのでフランス人にとっては都合がいい。
若いフランス人カップルは、給料も少ないので経済の問題から、すぐに一緒に住み始める特徴があり、また、そうしなければ暮らしていけない。そしてそのままPACS法の手続きをせずに、子供を産んで育てるケースもけっこうあるのです。
そのまま法律に縛られずにカップルの関係が存続して子育て中の場合もあれば、子供を産んでシングルマザーになる女性もかなりいます。
パラドックス的ですが、こうしたPACS法という法律によって、カップルの成立も解消もイージーになってしまったフランスでは、家族の絆が薄れてしまったように感じます。それでも親にとっては、一向によくならない経済状況の中で、子供の成長とともに教育費が増えて、家庭内の経済問題が深刻化しています。
フランスの家庭経済の内情
フランス女性で専業主婦が少ない。女性は出産後も仕事をするという考え。働くママへの育児サポートは日本に比べて進んでいるのが特徴。子供を預けて働くという事は、日本同様、様々な問題や経済の負担が生じるもの。それでもパパもママに働いて欲しいし、ママも仕事を続けたいのがフランス。
それには、当然、経済の問題があるわけ。フランスの物価は何もかも全てが高い印象。消費税も物品別の税率だけど、20%が基準。日本とフランスの物価を比べることは、その国の労働賃金や生活必需品や輸入品の違いがあり容易ではなく、簡単に日本のが高い!とかフランスの方が安い!とは言えません。特にパリは、観光客目当ての価格設定も当たり前で、なんでもかんでもどんどん値上がりしているように感じます。
そんなフランスの物価からみる一般のフランス人家庭の経済は、決して楽ではないことがはっきりわかります。少しでも安いディスカウントスーパーに食料品を買いに出かけるフランス人。カップルは共稼ぎで、出費を分担しないと生活ができないのが実情で、子供が生まれれば尚更大変です。
フランスは国による育児手当が日本より充実していて、幼稚園から大学まで公立だとお金がかからないという特徴がクローズアップされがち。でも実際に、パリで子育てしてみると、全くそんな事はなく、ある意味日本以上にお金を払ってきました。涙。
若者の就職に関しての問題が深刻化するフランスで、我が子により良い職業につかせるには、また、良い会社に雇用されるには、当然、良い学校に入れ学位を取らせなければなりません。日本と同じようにフランスでも親にはそうした学校の学費をはじめ留学にかかる費用などの経済の問題がつきまとうのです。
共稼ぎで家庭の経済を二人で支えるスタイルが主流のフランス。専業主婦のママが家計簿をつけ、家庭内の経済を管理してる日本。旦那様にお給料を持ってきてもらって、稼いできた旦那様に毎月お小遣いをあげるような光景をフランスでは見かけません。
共稼ぎであっても、特徴として自分で稼いだお金は、自分のモノ的な感覚がフランスの家庭の経済のカタチです。毎年、フランスでは、4月から5月に、自営業でもサラリーマンでも、夫婦でもPACSによる事実婚カップルであろうと家族という一つの経済の単位で、確定申告を自分たちでする義務があります。
夫婦の収入は、全て合算で申告するのです。失業中の場合で例え収入がゼロであっても申告が必要です。子供の給食や学童のなどの子供に関わる多くの出費がこの申告によって計算されるからです。
この申告、今ではネットで申告できるようなり便利になりました。でも、日本のような配偶者排除や配偶者特別排除などはありません。子供を扶養している場合の扶養控除のみです。
フランスは、ママもパパも毎日お仕事で忙しいのに、保育園や幼稚園、また小学校卒業まで送り迎えが義務です。朝、出勤前の早足のパパに手を繋がれ、眠い目をこすりながら早歩きをしながら通学する子供たちをたくさん見かけます。
お迎えだってパパとママで分担。フランスでパパが子供の面倒を見るのはごく自然なこと。日本のようにイクメンだとか騒ぎ立てたりしていません。
子供に夕食を作って食べさしたり、お風呂に入れたりは、できる方がするというカップルの家庭内での分担が家族の経済を支えているんですね。共稼ぎは忙しいけど、何より家庭の経済が豊かになり、ヴァカンスに行くことなども楽しめわけですから。
ヴァカンスがないなんてフランスでは考えられないほど、フランス経済とバカンス問題は、彼らが生きる上で大きなウエイトを占めています。家庭の経済が破綻していても、企業の業績が悪くても、無職でも、自分を取り巻く経済状況が悪かろうが、私のような日本人から見れば、「ヴァカンスに行っている余裕があるの?」と思ってしまうようなフランス人でも、しっかり休暇のことを考えていて、どこかヴァカンスへ行こうとしているんです。
フランス国民の特徴として、どんなに国や家庭の経済が悪くてもヴァカンスをなくすなどは考えられない。いつも労働時間の改正が提案されれば、大問題に発展してしまうほど。フランス人のヴァカンスに対するエネルギーは、ハンパないですから。
フランスの反対勢力と経済問題
「まだ、パリのデモは続いているの??」と日本のみんなに聞かれる今日この頃。毎土曜日に行われる暴動講義デモ「黄色いベスト運動」。規模は小さくなったが、まだ、続いている。
デモ隊が集結する観光大通りなどは、未だに交通規制が行われいて、パリ市民や観光客の移動がシャットアウトされています。
これは、今回の黄色いベスト運動に限ったことではないんです。フランスのお家芸とでも言えるデモやストライキの特徴については、前にこちらのイイナパリの「デモでパリ旅行が怖い人たちへ」でレポートしています。
燃料の値上げに反対で起こっている今回の黄色いベスト運動のデモ、ただ燃料の値上げだけが問題なのではないのです。フランスの経済の回復させるためには労働改正法と税制の問題の改革がマストなのですが、それにはどうしても国民に痛みが伴うものなのです。
ミッテラン、シラク、サルコジ、オーランド、マクロンとそれぞれの大統領就任期間中にフランスに住んできたけど、労働時間の短縮、週35時間になって更に、経済は悪くなる一方で。何度も様々な労働法改正法案が提案されてきたけど、反対勢力の大抗議デモやストライキによって、いつも中途半端に改革が断念されてきました。
マクロン大統領も他のEU諸国に比べて高すぎる法人税法が特徴のフランスから国際的な企業や工場の撤退が続くことに歯止めをかけなければならないと必死。日系企業もフランスでは法人化せず、他のEU諸国にヨーロッパの本社を構え、パリに駐在事務所だけを設けて税制対策をせざるをえないのです。
こうした法人税を下げてお隣リのスペインは、経済が活性化されたにもかかわらず、フランスでは、この法人税率を下げて外国企業を誘致する考えは、抵抗勢力に阻まれて可決されていません。
なぜなら企業に課せられない税金を国民一人一人から徴収することになるわけだから、国民の負担が増えるので大反対されてしまっているのです。
経済の状態が良いというのは、回っているサークルであることが不可欠です。法人税を下げて、フランスにも多くの外国企業が進出してくれば、雇用も増えるのだから失業者が減る。自分たちの働く場所を得ることができるはずなんだけど、、、。
仕事があって収入があれば消費も増え、経済が回っていくのだから、家族の経済が一時的に税率や社会保障の支払い増で厳しくなってしまっても、これからのフランス経済の問題を考えたら、絶対に避けては通れない改革ではないかと、外野の私は思っているんですが、、、。
いかんせん、フランス人は目の前のことだけしか見えないようで、残念ながら長いスタンスで見て経済のサークルが回るという考えがわからないようなのです。
フランスのブランド経済の特徴
いつの時代もアッパークラスは存在しています。世界には私たちの想像を超えるような大富豪いて、彼らが様々な消費することによって世界の経済が回ってくれているというもの。フランスにも億万長者が300人ほどいるらしい。
私たち日本人は、フランスの特徴といえば、ファッション、グルメ、ブランドというイメージばかり。こうしたフランスのシンボルとなる有名ブランドやグルメなどを実際にどれだけのフランス人が買うことができる経済の状況にいるのだろうか?
パリコレやフランスの有名ブランドは国の産業としてフランスの経済を支えていることには違いない。シャネルだって、ルイ・ヴィトンだって、エルメスも、世界中の人の憧れでもあるフランスブランドはフランス人だって大好き。でも、パリの街を歩いてみると一体、どれだけのフランス人がそうした自国のブランドのバックや靴を身につけているのでしょうか?
ルイ・ヴィトンなどは、比較的買いやすいプライスが特徴であっても購入できるだけの経済力があるフランス人は少ない。センスや好みもあるから、フランス人がモノグラムが好きかどうかは疑問なところだけど。
ミシュランの星つきレストランでフルコースのディナーを食べて、リュックスなホテルでエステやアフタヌーンティーを満喫できるようなライフを過ごせるだけの経済の力があるフランス人がどれだけいるのか?
パリというブランド力は、自国民によって支えられているのではなく、一部のフランス国籍を持つリッチな民族や外国人のお金持ちの経済があってこそ成り立っているのが特徴です。
フランスの中流家庭は日本とは違います。日本は、この中流クラスの幅が広いのが特徴で、庶民の暮らしの水準がフランスのミドルクラスより高いのです。だから未だにフランス人は日本人みんながお金持ちだと思っているくらい。
「日本だって経済が大変なんだから!日本の経済もめちゃくちゃになった!」と日本人は言います。確かに日本も経済が大変です。
でも、フランスに住み両国の今を知っている私から見れば、安倍政権にも経済の問題、景気回復の問題はあるけど、庶民の暮らしぶりを見ると、まだ日本の経済の方がフランスより状況は良いと思います。それほど、フランスの経済はヤバイと言えるんです。
国民の80パーセント以上が日本のミドルクラス以下の生活をしているフランス。これはあくまで私がパリにいて実際に見るフランス人の生活を通しての見方ですが。
現在までの20年以上に及ぶ私のフランス滞在期間の中で、一度も経済の回復を感じたことはありません。フランス人の家庭の経済問題もが少しの余裕が生まれたなどというような時を見たこともありません。いや、ますますひどくなっているというのが本音。
セレブはさらにセレブになっていく世の中。彼らのようなリッチ層は一大ネットワークで世界にフランスに存在し、彼らにとって都合良く、世界の経済が回っていく。
彼らによって消費が生まれ、世界の経済が成り立つのだから、フランス政府がいくら厳しく富裕層に課税を義務付けても、ネットワークを使って逃げ道を見つけることは彼らにとってはた易いことです。
治安の問題とフランス経済の関係
フランス経済の低迷による治安の悪化の特徴として移民の問題が取り上げられ、それが更にまた差別を生み出してしまう悪循環が続いています。どんなに努力しても、悲しいけど、テロもなくならない。貧富の差、格差問題もなくならない。
経済の問題つきものなのは、いつの時代も弱きもの。フランスでは、とにかく仕事がない、収入がないフランスで生まれた移民2世、3世達がいっぱい住んでいます。
フランスの格差社会や経済に不満が募るこうした移民たちが起こすテロ問題。確かに、パリの街中で仕事もなく昼間からブラブラしている男性を良く見かけるし、メトロ駅構内を歩けば、浮浪者と物乞いも多いと思う。
ではフランス政府がこうした弱き彼らに何もしていないのかというと、とんでもない、そんなことはないのです。これだけフランスの経済を圧迫している大きな問題は、フランスの社会保障制度であって、弱者とされる人々はこの社会保障、国からの手厚く手当を貰っているのです。それはもうフランスは立派な社会主義国家と思うほどです。
権利ばかりを主張する国民ですから、フランス国籍を取得している移民たちは、失業保険から生活保護、養育手当、家賃手当、無料医療制度、子供の給食免除、ヴァカンス費用のサポートなどなど。日本や他の外国では考えられないような手厚い社会保障の制度の恩恵を受けているのが特徴です。
こうした社会保障は、フランスにある企業の法人税やミドルクラスや労働者階級から徴収した税金と保険料からの支払われているわけだから、フランス経済の負のサークルの最大の問題はこの社会保障制度に他ならないのに。
フランス経済と弱者とされる移民や治安の問題と社会保障制度の問題は、解決の兆しが全く見えない。完全にマイナスのスパイラスに陥ってしまっていて、どんどん悪い方向へ行っているように見える。
国の経済危機や財政赤字。それを解決するためには社会保障予算削減法案は必要不可欠だが、一度甘い汁を吸ってしまったフランス人がそう簡単に首を縦に振るはずがありません。彼らは必ず反対勢力となり法案を阻止するために結束し、経済の混乱を招くデモやストライキを起こすのです。
国民が一時的に痛みを伴う改革であっても、国の将来を考えたら、このような社会保障制度の抜本的改革をしないことには、フランス経済は良くなるどころではないのは誰が見てもわかるはずなんだけど、この点だけは、どうしてこうもおバカさんなのか、もう本当に、フランス人が私にはよくわからないです。
まとめ
フランスの経済を語るには、そこで暮らす人々の生活そのものを見たりしていなければ実際のところはわからないはず。いくら世界第5位の経済大国だと言われても、EUの経済をドイツと共に牽引するフランスと言われても、その実態は住んでみて初めてわかるというもの。
フランス経済の特徴や問題を一般的なパリ市民の生活からみてみると、フランスの経済が世界第5位とは到底思えないようなひどさだと思う。一部のお金持ちの人たちを除いて、家庭も国家レベルもフランス経済は破綻寸前で、人々は心の余裕も思いやりもなくなってしまった気すら感じる。
フランス経済が社会保障制度や税制法の理由で低迷の一途をたどるせいで、古き良きフランス、私たちが思い描いた豊かな文化を持つフランスが消えていくようでとても切ない。経済の回復の見込みがみえず、フランス人はどんどんギスギスなってくるし、10年前と比べると彼らの顔つきも怖くなった。
いくら手厚い社会保障制度があって、手当でヴァカンスに行くことができても一時的に開放感を味わえても、またヴァカンスから戻れば、そこには経済的な問題がしっかり残っているわけで。物事の本質など変わらない。
フランスの庶民が不満ばかり募らせる気持ちもわからなくはないが、文句ばかり言っているようなところも多いにある。企業や真面目に働いている人が支払っている税金や保険料があってこその社会保障手当なのに、権利だけを主張するフランス人の多いこと。それではフランス経済の問題が解決するわけなど絶対にない!
フランス人たちは、自分の権利と目先のことだけで騒ぎ立て、自分たちの首を閉めていることに気づかない。気づきたくないんだろうな。
私も収入が少ないのに、こんなに払うのか?と思うほどの税金を払っている。マクロンのせいだ!マクロンの陰謀だ!とフランス人と一緒に叫びたいほどの恐ろしい金額の請求が来る。
マクロン大統領によるフランスの経済回復のための法人税改正が可決されれば、私のような一般市民は、今まで以上に支払う税金や保険料がUPしてしまうんだろうと思うとやっぱりこわいです、フランスの経済の将来のためとはいえ、私も、もう、これ以上、払えないって!いうのが本音です。