デモでパリ旅行が怖い人たちへ

連日、日本のニュースで、死人が出るほど過激化した大規模なパリのデモの映像が流れています。

そして多くの人が、こんな時期、怖くてパリ旅行なんてとんでもない!とデモのせいでパリ旅行をキャンセルしています。

今回は、デモを理由にパリ旅行をやめた方が良いのかなど、私から見たフランスとデモについてブログで書いていきたいと思います。

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フランスは革命の国、デモは文化

サトミーナ
こんにちは!パリのコーディネーター・サトミーナです。(@SatominaS)

フランス革命は、世界で最も有名な市民革命です。学校の歴史の授業で習い、また、史実に基づいたストーリーで、オスカルなどの人気のオリキャラも登場する漫画「ベルばら」も広く知られていますね。

日本の女性にファンが多い王妃マリーアントワネットですが、フランス人にはあまり好かれていません。(笑)旅行でパリに来たら、絶対、みんな、一度は、王制時代の象徴的建物のヴェルサイユ宮殿を見学します。

王様が絶対的権力を持ち、聖職者や貴族たちだけが贅沢な生活を送り、それを支える平民は、増税や麦の凶作のせいで、身を粉にして働いても、生活は苦しくなるばかりでした。そんな彼らの不満が爆発し、暴動デモが勃発。これが革命への動きと繋がっていったわけです。

その後、ナポレオンの出現によって、フランス革命は終焉を迎え、身分や職業でのわけ隔たりのない市民平等の国民国家に生まれ変わるのですが、、、。

フランスの革命の際、女性たちが、パンを寄越せ!と国王と議会に訴えるためにパリからヴェルサイユに向かって武器や大砲を持ってデモ行進したヴェルサイユ行進(十月事件)が有名です。そして反体制デモ抗議の力でルイ16世とその家族をパリに連れもどし、裁判にかけ、有罪とされた国王と王妃をゲロチン処刑に成功するわけです。

このように民衆が一致団結して、政府に対して積もり積もった不満を爆発させ、自分たちの権利を主張するデモ抗議暴動を起こすことによって、国の体制を変えると云う歴史的偉業が成し遂げられた経験は、革命スピリットとして、しっかり現代のフランス人に受け継がれているのです。

今、ニュースになっているパリで過激な「黄色いベスト」のデモ運動も、燃料費増税に抗議する運送業に従事する者たちから現政府に不満な人たち。暴動化したデモ隊は、シャンゼリゼ大通りをはじめとするパリの観光地の中心を占領し、警官と激しく衝突。トラックや街中のゴミ箱に火をつけ、パリの街角が炎に包まれ、死者やけが人が出ました。

このデモで、メトロ(地下鉄)駅も封鎖され、旅行者も住民も交通移動手段を失われ、また商店やスーパー、レストラン、ホテルまで、店を閉めてしまいました。

パリのこのような変わり果てた光景を見たら、テロ同様、今のパリは、デモ騒動で恐ろしく危険な街と脳裏にインプットされるのが普通です。誰だって、燃え上がるパリの街を見れば、恐くてパリなんか旅行できない!

と思ってしまうのは理解できますが、私のようにパリに住んでいる者だと、今回の黄色いベストのデモ抗議運動も「まったデモをやっているのか…」「またデモが始まったのか…..」くらいにしか思えない、パリの日常的なシーンの一つに過ぎないのです。

今回の暴動化した大規模なデモ抗議集会は、パリのデモ行進の聖地と言われるバスティーユ広場や共和国広場界隈だけでなく、パリの有名観光地や富裕層が多く住む地区でも行われました。

パリの広い範囲でデモ集会が行われたことが今回のデモの規模の大きさを物語っていますが、その場所の違いくらいだけで、デモに慣れてしまったパリ市民からすると、今回のデモもたいしていつものデモとは変わりないと思ったのではないでしょうか?

パリにいると毎週、デモに遭遇する

旅行でパリに来たら、今回、メディア報道で話題になっているようなラディカルなデモだけでなく、小さい、大きいのデモの規模の違いこそはあるけれど、必ず、どこかで抗議デモ隊に遭遇するものです。

特にフランス革命が勃発したバスティーユ牢獄襲撃の跡地のバスティーユ広場は、毎週末、何かデモがあるのです。ただのデモ抗議集会だけでなく、ロックやテクノ、クラッシックカー、トランスジェンダーのパレードなどもこの革命のシンボルの広場バスティーユを中心に催されます。

パリの空港に着いてからからホテルに移動するタクシー車窓から、見慣れないこうしたデモ隊やパレードの人の群れと大騒ぎを見て、「何事か?」と必ず疑問に思います。また、タクシーやバスの運転手は、迂回による交通渋滞にうんざりで、パリ市民も交通が遮断されてしまい、えらい目にあわされるのです。

だから、パリの旅行でデモに巻き込まれるのが怖い観光客は、できれば土曜日の午後は、デモの聖地でもあるバスティーユ広場や共和国広場界隈には行かないほうがベター。

ただ、ニュースで映し出されるデモ隊と警察が衝突するような過激なデモばかりではないので、週末に、この界隈の大通りで、パリならではのパレードを見物するのも楽しいものなんですが、、、。

パリ旅行で、デモやパレードに鉢合わせ得る確率は本当に高い。市内中心部のホテルに滞在するなら、デモや行進、イヴェントの騒ぎが聞こえてきたり、部屋の窓からデモの様子を垣間見ることもできます。窓越しに眺めているだけなら、巻き込まれる危険性はないから、是非、ちょっとフランスのデモ文化を観察してみて!欲しいです。

せっかくのパリ旅行で、デモのせいで、観光名所や美術館巡りなどができないのは、残念だけど、やっぱりツーリストにとっては、何より安全対策を万全に期することは何より大事。

だから、市中の外出は控えて、ホテルの部屋からデモ騒ぎを客観的に見物しながら、フランス革命を想像することも違った意味で、フランスの文化に触れられる貴重な体験の思い出になるはずです。

パリの高校でデモの授業?

息子が通ったパリの中心地、マレ地区にある公立の高校。教師たちは、それぞれ異なる労働組合に加盟しています。フランスの労働組組織の力は、日本に比べとても大きく、組合は頻繁に政策に対して抗議のストライキや反対デモを行います。

だから息子は、先生がストライキで学校に来ないでデモ隊に参加するので、その先生の授業が休講になった経験を何度もしています。フランス人は、日本人に比べて、政治に対する関心度が高いので、教師も授業に構わず、熱心に政治やデモについて語ることも珍しくありません。

1968年5月に、学生たちよってパリ左岸のサンジェルマン大通りが占領され、「自由と平等とセクシャリティー」をスローガンに、過激な暴動デモやゼネストが繰り広げられたはじまったパリの5月革命は、60年代後半の欧米や日本の若者たち主体の学生デモ運動の中でも知名度が高く有名です。

今の日本で、この当時のような学生デモ運動を見ることはありませんね。でも、フランスには、デモやストライキに対するスピリチュアルは今の学生にも受け継がれているのです。フランスでは、不景気による若者の雇用問題が深刻化しています。

苦労して勉強して大学を卒業しても仕事がなく、高学歴失業者は増え続け、若者は将来の希望が持てない世の中です。何の政策も変化もない政府に反発する若いエネルギーが爆発して、学生のデモ集会も頻繁に行われています。

こうした高校生の中には、デモに参加のため登校できなかったのに、欠席扱いされず出席になるケースもあり、それを知った時は、さすがに私もビックリしました。また、高校の授業の一環で、高校生がバスティーユ広場界隈をデモ行進をしているのを見たことがあります。

年末の黄色いベストのデモ抗議運動と同時期に開催された高校生たちによる大きな反体制デモ行進の様子もフこちらのニュースで見ました。フランスの学生によるこのような不満抗議デモは今やもう恒例の行事ようですね。一致団結し、自分たちの権利をデモというカタチで主張する革命の精神は、子供の頃から培われているです。

ただ、高校生もデモばかりに参加していると勉強が疎かになってしまうので、一度くらいは、参加しても、継続的にデモ活動することはあまりありません。そんなことをしていたら、本末転倒で、大事な進級や進学ができなくなることは彼らもわかっています。

たまたま、私たちは、マレ地区やバスティーユ界隈という地域に住みでいたので、他地区のパリの住民や旅行でパリに来ている人とは、環境も異なり、自然にデモを受け入れ避けるというような感覚が身についています。パリ市内でもデモとは無縁の高級住宅住宅地の16区や17区の西側は、ブルジョワファミリーが大多数生息する地なので、学生も大人しいものですよ。

パリのデモからフランスの団結の力を見る

私は、フランス人はネガティブな人種だと思っています。とにかく、何か意見を聞かれたりすると、必ず、マイナスで悪いことを言う。意見を聞かれると、反対意見を述べる。なんでもまず「NON=ノン」から始まるのではないかと思うくらい、彼らの反対するエネルギーは凄い。

個人主義が強い国民性なのに、それぞれ個々に皆、どこか秘めた強い革命精神を持っているように思います。そして不満を爆発させた時に、一致団結して、強い繋がりを持って、反対抗議デモを行います。彼らのどこからそんな団結力が生まれるのか、本当に謎です。

彼らは、何でもかんでも、団結=ソリダリテ!(solidarite)を呼びかけ、弱者に味方するマインドを持って結束を求めます。そうした社会団体や組合も星の数ほど存在します。物事の解決に、団結ばかりが叫ばれ、結束されたデモ隊が、過激な抗議暴動を行い、国や街を麻痺させ、市民や旅行者を混乱させているのですが、、。

結果的に、こうしたデモは、パリ観光に来ている旅行者を追い出し、パリ旅行をキャンセルさせて、大きな経済的損失が生じるわけで、それが、デモ活動をしている人たちの日々の暮らしや生活にマイナスに影響することを考えれば、ただ、目先のことばかり考え、「団結だ!」「今の政府の政策を阻止!」と権利の主張をしたところで、進歩的な良い解決ではないのは明らかなんだけど、、、。

真剣な抗議デモであるにもかかわらず、商店のウインドウや公共の物を破壊するデモ隊の姿は、ただ、ストレスを発散させているだけにしか見えない。壊した物の代償として、公共料金や商店の商品価格もアップするだろうにとも思うけど。

フランス革命で女性がバゲットパンを持ってデモ行進したように、現代のデモ隊には、旗、プラカート、爆竹、風船、笛、箒などのグッスが必需品とされています。2年前に行われた農業や酪農関係者による抗議デモによって乳製品の出荷がストップされ、フランス各地から彼らはトラクターに乗ってでパリの大通りに集結しました。

旅行者から見ればその光景は、まるでお祭りパレード。市民も物珍しそうに大通りを行進するトラクターの行進を携帯でパッチリと写真を撮っていました。

消防士のデモやストライキなら、隊員による消火パフォーマンスが行われるし、ポリスや白バイのデモもあるから、危険と言われても、ついつい野次馬根性で見に行って、写真を撮りたい旅行者や住民もいますね。

こうした「団結=ソリダリテ」したデモは、フランスの文化とも言えるが、私の方こそ、ネガティブな意見を言わせてもらえば、フランス人が口を揃えて言う「ソリダリテ=団結」ほど、苦手なモノはない。そんな無駄な団結って、本当に必要なの?いらないじゃない!というのが私の本音。

パリ旅行でデモに鉢合わせたら

パリ市内では、頻繁にデモがあるので、避けたくても遭遇してしまう場合も多い。今回の黄色いベスト運動のデモ集会の場所がいつものデモ集会開催区間内の通りではなかったが、先ほど述べたように、デモは、基本的に最近注目スポットとして人気のあるパリの東側地区、主にバスティーユや共和国広場あたりの土曜日の午後に行われる。

だから騒ぎに巻き込まれないためにも、この時間帯にこの界隈に用事がないのであれば、近づかなければいい。バスティーユー近くのマレ地区は、日曜日もブティックがオープンしているので、何も、デモ日と言われる土曜日の午後にこの辺りに近づく必要はない。マレに行きたければ、日曜日に行けば良い。

パリの旅行者で、街に慣れていない人は、路線バスに乗るのは、正直、困難だ。デモの聖地地区の土曜日は、デモのせいで路線バスの運行中止されたり、路線が迂回されることも多いので、旅行者にとっては、さらに、わかりづらい。

共和国広場で大きなデモが行われると、警察部隊と衝突もあるので、近づかないこと。共和国広場のメトロ駅でもあるレプブリック駅は、封鎖されるので、近寄らないこと。

こうしたパリの交通公団RATPのサイトやアプリを利用して、デモによるメトロ駅の封鎖状況や路線運行状況を事前に調べておくことをアドバイスしておきます。

パリ交通公団RATPの運航状況サイト(仏語)です。

まとめ

日本人のとっては、見慣れない光景であるデモ。パリ旅行を実行するのかキャンセルするのかをデモ発生で決めるのは、ちょっとナンセンス。だって、何度も言っているように、フランス人の多くは革命家なんだから。残念だけど、デモやストライキがこのパリから無くなることはなさそうだから。

今や、テロを含め、世界的に安全な都市や街などない。日本は、治安が良いとされ、日本人だけがどうも平和ボケしているだけで、世界は、どんどん物騒になってきている。誇り高き美しい文化と歴史を持つパリも、ここ数年、街の空気や人々も殺伐とした雰囲気がする。パリ旅行のリピーターや住民は特にそうした違いを肌で感じているもの。

不平不満ばかりで、なんでもかんでもすぐに反対抗議デモ運動。いくら革命精神の国と言われていても、ただデモやゼネストを行って、一時的に問題を回避できても、目先のことだけ。意味がないものなんだと思うけど。

世の中を変えて行くって、一人、一人、個々が変わらなければ、全体を変えることなんてできるはずがないのだから、どこかに歪みが来る。その歪みとして、目に見える点では、旅行者の減少で、観光収入が減少する。物通もストップするので、経済的な打撃を受け、ぐるっと回って、自分たちの首を閉める。

結局、デモ隊は、一時的に暴れて武力と粘りで、政府の政策を一時的に回避したに過ぎず、破綻寸前のフランス国家の根本的改革、変化には全く及ばない。日々の暮らしが益々ひどくなるにもかかわらず、目先のことだけに振り回され、政策に反対抗議のデモを行い、まるでパリに旅行なんかで来るな!っと言っているよう。

本当に国を良くしたいと思っているフランスの政治家がどれだけいるのだろう。やはり、封建制度は崩れたとはいえ、特権階級の人たちだけが、優遇され、私腹を蓋している構図は、ゴーン氏の例をみれば良くわかる。だから市民は、怒るのだろう。

憤りの気持ちがあっても、デモ抗議では、根本的な解決はできない、一人一人が、今、何をすべきか?を真剣考えて、正しい判断ができるようになること。ひとりひとりが生命力に満ちて生きていく、変わっていかなければ、デモ行動を起こしても何も変わらないだけじゃなくて、率直に言って、もっととんでもない方向へ行ってしまうようで怖いです。